東北大学大学院理学研究科化学専攻分析化学研究室
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SNPs (Single Nucleotide Polymorphisms、スニップス)



 DNAの塩基配列は、同じヒトであっても、個人によって僅かずつ異なっていることが分かっています。 例えば、第12番目の染色体には、“酒酔い遺伝子”(アルデヒド脱水素酵素、aldehyde dehydrogenase 2; ALDH2)と呼ばれる部分があります。 欧米人のように酒に強い人の塩基配列は、

 …- ATACACT - G - AAGTGAA-…

であり、アジア人のように酒に弱い人の塩基配列は、

 …- ATACACT - A - AAGTGAA-…

です。GAの配列以外は同じですが、一塩基の違いで人の性質が異なります。 これが SNP (スニップ、Single Nucleotide Polymorphism = 一塩基多型 の略)と呼ばれるもので、数多くあるので複数形でSNPsと言います。

 SNPsは数百から千塩基に1個の割合で存在し、全ゲノム中には300万〜1000万か所もあると考えられています。 このSNPsが、病気のかかりやすさや薬の効きやすさなどの個人差に関連していると考えられています。 現在、SNPsを系統的に調べてデータベース化し、患者の体質に合った薬の処方や治療を行う“テーラーメイド(オーダーメイド)医療”に高い関心が集められています。 これを可能とするには、SNPsを迅速に分析できる方法の開発が極めて重要 となります。


 DNAの塩基配列を読み取る分析法として、多くの方法が提案されていますが、時間がかかり、費用も高いという問題点があります。

 私たちは、脱塩基部位を持つDNAに着目しました。 プリン塩基やピリミジン塩基が欠損した脱塩基DNAはヒトの細胞内で1日に1万個以上も生成しているものです。 私たちは、この“脱塩基部位を持つ人工DNA”と分析したい塩基配列を持つDNAとで二本鎖を作らせ、 “標的塩基と水素結合する蛍光性小分子”を脱塩基部位(AP site)に取り込ませることで、蛍光強度の変化からSNPを検出する方法を開発しました。



"Use of Abasic Site Containing DNA Strands for Nucleobase Recognition in Water"
K. Yoshimoto, S. Nishizawa, M. Minagawa and N. Teramae,
J. Am. Chem. Soc., 125(30), 8982-8983 (2003). [abstract]



Fluorescence detection of the P177R
point mutation (C/G) in the p 53 gene
(5'-C TGC CYC CAC C-3' /
3'-G ACG GXG GTGG -5';
Y = C (normal) or G (mutation), X = AP site)

 また、この方法を“p53ガン抑制遺伝子”の検出に応用しました。

 p53という名前は、この遺伝子からできるタンパク質の分子量が、 約53,000であることに由来します。 このp53遺伝子の異常は、大腸ガンや肺ガンで高頻度に認められており、 p53遺伝子に異常があると、抗がん剤が効きにくくなり、ガン細胞の細胞死(アポトーシス)を起せず、ガン細胞が増殖することになります。 そこで、正常なp53遺伝子をガン細胞に導入して、細胞の増殖を抑制したり、アポトーシスを誘導する試みが行われています。



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