東北大学大学院理学研究科化学専攻分析化学研究室
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MCM-41



 界面活性剤(surfactant)には親水基と疎水(親油)基があり、親水基としてカルボキシレート基を持つ“ステアリン酸ナトリウム”(C17H35COOH) や、硫酸エステル基を持つ“硫酸ドデシルナトリウム”(C12H25OSO3Na: SDS) などはアニオン性界面活性として知られています。

 このような界面活性剤は、濃度や温度によって溶液中での構造が変化し、臨界ミセル濃度(critical micelle concentration: CMC)以上の濃度では、数十分子が会合してミセルを形成します。 CMCは温度や共存塩の影響を受けますが、イオン性界面活性剤では0.1-0.001M程度となります。イオン性界面活性剤の溶解度が急激に増大する温度があり、 これをクラフト点(Krafft point)といい、この温度でミセルが生成し始めます。



Fig. 1 イオン性界面活性剤

 イオン性界面活性剤は、Fig. 1に示すように、その種類によって、濃度の増加と共に球状や棒状、板状のミセルを作りますが、 これらのミセルは、さらに濃度が高くなると規則的に並んで液晶状態になります。棒状ミセルが集合して“六方晶系(hexagonal)”となったり、 板状のミセルが集合して層状の“ラメラー(lamellar)構造”になったりします。



 さて、カチオン性界面活性剤である “ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド” (C12H25N(CH3)3Cl: C12TMACl) のミセル溶液を塩基性にしてシリカを添加すると、カチオン性ミセルが集合した六方晶系の構造で、親水基でカチオンであるアンモニウム基のまわりにアニオンであるシリケートが配位する構造、 つまり棒状ミセルをガラスで包んだ集合体ができます。これは有機化合物である界面活性剤と無機化合物であるシリカが複合した、“有機無機ハイブリッド物質” となっています。

 この物質を500℃で焼くと有機物が除去されて、棒状ミセルが抜けた蜂の巣の形をしたガラスができます(Fig. 2)。これがMCM-41と言われるもので、界面活性剤のアルキル鎖長が蜂の巣の穴の大きさを決め、 2-10 nm 程度の孔径のチャンネルがたくさん集まった構造をとって、1 g当たりの表面積が1000 m2にもなる特性を持っています。 開発されてから10年余りが経ちましたが、現在、触媒や分子ふるい、環境浄化材などへの利用を目指して活発に研究されています。



Fig. 2 MCM-41の作製



Fig. 3

 MCM-41のイメージ図をFig. 3に、また、私たちが作成したMCM-41の電子顕微鏡写真と特性をFig. 4に示します。


 私たちは、ジシアノベンゼンの“化学気相蒸着法”(Chemical Vapor Deposition: CVD)によりMCM-41の一次元性のチャンネルを利用して、 チャンネルの中に高密度にフタロシアニン分子を集積することに成功しました(Fig. 5)。


"Ship-In-a-Bottle Synthesis of Copper Phthalocyanine Molecules within Mesoporous Channels of MCM-41 by a Chemical Vapor Deposition Method"
Y. Tanamura, T. Uchida, N. Teramae, M. Kikuchi, K. Kusaba, Y. Onodera,
Nano. Lett., 1(7), 387-390 (2001).



Fig. 4

Fig. 5


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