東北大学大学院理学研究科化学専攻分析化学研究室
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Mesoporous Membrane



  • 以下の雑誌、新聞に掲載
  • 2004年5月号のNature Materialsの"Cover & News"で紹介されています。

    C. R. Martin and Z. Siwy, "Molecular Filters: Pores within Pores"
    Nature Materials, 3, 284-285 (2004).

  • 関連する論文
  • Anal. Chim. Acta, 556, 457-163 (2006).
  • J. Phys. Chem. B, 110, 3910-3916 (2006).
  • Chem. Lett., 35, 1352-1353 (2006).
  • Anal. Sci., 22, 1501-1507 (2006).
  • Adv. Mater., 20, 1034-1037 (2008).
  • J. Phys. Chem. A, 112, 11535-11542 (2008).
  • Chem. Commun., 853-855 (2008).
etc...



Fig. 1

A mesoporous membrane composed of nanotubules with a uniform diameter has a potential use for precise size exclusive separation of molecules. We report a novel method to form a hybrid membrane composed of silica-surfactant nanocomposite and a porous alumina membrane, by which size selective transport of molecules across the membrane becomes to be possible. The nanocomposite formed inside each columnar alumina pore was an assembly of surfactant-templated silica-nanochannels with a 3.4 nm channel diameter, and the channel direction is predominantly oriented along the wall of the columnar alumina pore. Molecules could be transported across the membrane including the silica-surfactant nanocomposite with a capability of nm-order size exclusive separation. Our proposed membrane system has a potential use for not only separation science but also catalytic science and chip technologies.



 界面活性剤を鋳型として形成するメソポーラスシリカは、一次元シリカナノチャンネルの集合体であり、細孔径がnmオーダーで均一である、 という特徴を有します。私たちの研究室では、この一次元シリカナノチャンネルを利用した新規物質合成および新規分子認識系の構築に関する研究を進めています。


 1992年、モービル社の研究グループが界面活性剤を鋳型としたメソポーラスシリカの合成(Fig. 2)に成功しましたが、 これはゾル−ゲル法により合成した数百nm程度の大きさの粉末でした。その後、様々なデバイス応用を目的として、 一次元シリカナノチャンネルのチャンネル方向を広範囲に制御する試みが行われ、その中で、基板上にシリカ源である TEOSと界面活性剤の混合溶液をスピンコートすることによって、基板表面に平行にシリカナノチャンネルが配列することが報告されました。 また、液液界面や気液界面を利用し、同様にシリカナノチャンネルの配列を制御する研究も行われました。



Fig. 2


 このように、二次元平面である界面を利用することで、シリカナノチャンネルの方向制御が可能であることが分かってきました。 しかし、界面に対して並行なシリカナノチャンネルが集積できるのですが、単に界面を利用しただけでは、 全てのチャンネルの方向を広範囲(数cm角)に渡って揃えることは不可能でした。また、基板表面形成したシリカナノチャンネルが集積した薄膜は、 Fig. 3に示すように、薄膜に対する物質透過が不可能です。



Fig. 3



Fig. 4

 我々は、以上の問題を解決するために、多孔性の陽極酸化アルミナ膜の孔中にシリカナノチャンネルを集積させることを試み、 世界に先駆けて成功しました(Fig. 4)。細孔径が100〜200nmのアルミナ細孔内に、これまでの報告と同様、 TEOSとCTAB界面活性剤を含む溶液を導入し乾燥させると、TEM像で観測されたように、 アルミナ細孔壁に沿ってシリカナノチャンネルが配列しました。

 アルミナ細孔内に形成したシリカナノチャンネル集合体の特徴は、

  • チャンネル方向がアルミナ細孔の方向と同一であり、チャンネル直径はおよそ3.4nmと均一である。
  • アルミナ細孔内に隙間なくシリカナノチャンネルが充填されている。

という点です。また、今回実験で用いた直径2cm、4cmのアルミナ膜中全ての細孔内に、 チャンネル方向の揃ったシリカナノチャンネルが形成していますので、

cmスケールの広範囲にわたってシリカナノチャンネルの方向制御が達成されている

という特徴を有します。



Fig. 5

 現在のところ、アルミナ細孔内でのシリカナノチャンネルの形成過程として、 “アルミナ細孔壁に対するカチオン性CTABミセルの吸着”と“ミセル周囲でのTEOSの重合”という、 これまで報告されている界面におけるシリカナノチャンネルの自己組織化過程に基づいていると考えています(Fig. 5)。 これは、シリカナノチャンネルの配列性がアルミナ細孔壁近傍で高く、細孔壁から離れるにつれて配列性が低下するTEM画像 (Fig. 1)から推測されます。



 これまで、分子の自己組織化を利用したナノ構造形成では、ナノ〜数マイクロメートルオーダーで規則的配列構造を有するナノ材料の構築に関する報告はあります。 我々は、細孔径が100〜200nmのアルミナ細孔が広範囲に渡って分布するアルミナ薄膜を利用し、それぞれの細孔内にシリカナノチャンネルの集合体を形成しています。 従って、センチメートルオーダーでシリカナノチャンネルの配列制御が可能となりました。このように、シリカナノチャンネル集合体を充填したアルミナ薄膜 (以下、“ハイブリッド膜”)は、ナノチャンネルを利用した実用的なデバイスへの応用が期待できます。


Fig. 6

 その一例として、分離膜としての応用を図り、ハイブリッド膜を用いた分子透過実験を行いました(Fig. 6)。 分子サイズの異なるローダミンB、ビタミンB12、ミオグロビン、牛血清アルブミンを用いた膜透過実験を行ったところ、 チャンネル直径以下の分子サイズであるローダミンB(ca.1nm)、ビタミンB12(ca.2.4nm)では膜透過が観測されたものの、 チャンネル直径より大きい分子サイズのミオグロビン(ca.4nm)、牛血清アルブミン(ca.7.2nm)は、 全く膜透過が観測されませんでした。

 このように、ハイブリッド膜は精密な分子ふるい能を有する分離膜として機能します。 また、我々が開発したハイブリッド膜は、シリカナノチャンネル内への触媒サイトの導入、分子認識試薬の導入などにより、 触媒反応の場として、あるいは分離・分析チップとしての応用が期待されます。



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